とーどんの旅と本棚。

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タイトルからは考えられないような繊細な愛の物語――浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」

今回紹介するのは、浅原ナオトさんの「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」です!!

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タイトルの破壊力が凄いですね。

タイトルにつられて、つい買ってしまったのですが、タイトルからは想像もつかないような繊細で感動できる話でした!

 

あらすじ

主人公の安藤純は、クラスの女子、三浦紗枝がBL本を買っている場面を目撃してしまい、絶対自分のBL趣味をクラスでばらさないように釘を刺される。

しかし、純自体が年上の男性と関係を持っている同性愛者であることは誰も気づいていなかった……

 

秘密を共有しているという特別感もあり、純に惹かれ始める三浦。純は自分の性的志向と彼女からの思いの中でせめぎ合う。

一風変わった青春?物語!!

 

感想

 

タイトルでちょっと買いにくいって感じてる人にも是非読んでほしい!

 

特に最近、ジェンダーについての議論が活発化しているのでこの機会に多くの人に触れてほしい作品だと感じました。

 

これは持論なんですけど、ただ事実とか研究結果を羅列してあるような本から情報や知識を取り入れるより、一本柱のある物語に乗せていろんな背景や情報を与えられたほうが読み手の心に残るんじゃないかなって感じています。

まあいつかの戦争で油まみれになった水鳥の映像を流すことによって国民の戦争意欲高めたみたいな話もあったじゃないですか。あれと同じで。

ストーリーがあったほうが共感できるって心理ですかね?

 

百聞は一見に如かずじゃないですけど多くの人の目に留まってほしい。

 

んで、内容に対する感想なんですが、本当に純くんとかが儚い

性的マイノリティ故の苦悩とか思いとか痛みとか全部抱え込んでい、その描写を僕たちは読まされるわけですよ。

 

言葉の一つ一つが痛いし涙腺にも来るに決まっているじゃないですか。

 

特に終盤入ったあたりの展開はキツかったですね……

 

んで、作内での純の心理描写が巧み過ぎてこの作者すげえってなって調べたら、作者の浅原ナオトさん自身もカミングアウトしてらしたようですね。

そりゃこんだけ揺れ動く純の心理描写が生々しさをはらみつつ描き切れる訳だわ。

ちょっと人とは性的趣向が違うだけでここまで日常生活での苦労があるのかって感じで脱帽です。月並みな感想ですがやっぱ難しい問題ですよね……

 

純くんは同じ性的マイノリティで、顔も知らない「ミスター・ファーレンハイト」という人物とよく会話しているんですが、この二人の関係の結末も儚い。

詳しくは書きませんが全幅の信頼を寄せられる友人っていいですよね。

 

作中でも語られていましたが、物理の問題などで端に小さく書かれている「摩擦や空気抵抗は加味しないものとする」という文言のように、「ないもの」として扱われているような性的マイノリティの方も声をあげられる世界になればよいですね。

 

ほんとにこんなデリケートな問題についてどう取り組み、どういった反応をすればいいか今の自分には正直分かりません。

 

でも、色々な本を読んで少しでも自分の認識を改めたり、世界を広げたりできたらいいなって思います。

 

この本は今私たちが直面している問題に対して一石を投じるような小説なので、

いろんな人に色々な感情を湧き起こしてもらいたいですね。

 

僕はこの本のラスト、めっちゃ好きです。

 

それでは。