とーどんの旅と本棚。

本のネタバレなし紹介を中心に旅とか趣味とか。

少ないページ数で与えられる衝撃としては一級品。――宿野かほる「ルビンの壺が割れた」

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今回紹介するのは、最近文庫化されて本屋ではよく見る一冊ですね!

宿野かほる先生の、「ルビンの壺が割れた」です。

もう全国の本屋で現在この本を扱ってない店はないレベルではないでしょうか?

170ページという短さの中にも、色々な表現方法があるのだと気づかされた一冊でした!

 

あらすじ

未帆子のもとに、一通のメールが届く。それは元恋人の水谷だった。

そこから始まった緩い二人のやり取りは、あらぬ方向へと突き進んでいく。

やり取りの中での違和感は、最終盤に収束する……

といった感じです。あらすじ書くの難しい。

 

感想

物語の終盤からだんだん狂気が増していくのが怖い!

何書いてもネタバレになりそうなこの一冊だけどこの表現ぐらい許してほしかった。

 

さて、この小説は地の文など一切なく、

二人が書いたメールを読者の私たちは享受し、それを追っていくというタイプのなかなか新しい小説となっています。

 

最初は「ちょっと読みにくいかな~」と思っていたのですが、

読んでいくうちになかなかどうしてになる。

この表現方法をとることで登場人物の心情が分かりやすいのが、この本の読みやすさに直結している気がしますね。

 

タイトルの「ルビンの壺が割れた」は作中に出てくる劇の名前なのですが、

読み終わった後に振り返ってみると「なるほど……!」と腑に落ちる。

タイトルの意味ってそういうこと!?」って妄想が捗る余地があるのもポイント高い。

 

 

やっぱね、読み終わった後も考察とか妄想の余地残してある作品は素敵だと思うんですよ。

 

 

 

後ですね、ラストの余韻がなんか色々凄い(語彙力崩壊)

まとめ

この「ルビンの壺が割れた」という作品は、

  • ページ数が少ないので読みやすい
  • 先が読めない内容
  • 絶妙な余韻あるラスト

など、非常に楽しい?作品です。

小一時間で読める割にパンチの聞いた作品なので、皆様も読んでみてはいかがでしょうか?

それでは。

 

 

 

 

 

タイトルからは考えられないような繊細な愛の物語――浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」

今回紹介するのは、浅原ナオトさんの「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」です!!

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タイトルの破壊力が凄いですね。

タイトルにつられて、つい買ってしまったのですが、タイトルからは想像もつかないような繊細で感動できる話でした!

 

あらすじ

主人公の安藤純は、クラスの女子、三浦紗枝がBL本を買っている場面を目撃してしまい、絶対自分のBL趣味をクラスでばらさないように釘を刺される。

しかし、純自体が年上の男性と関係を持っている同性愛者であることは誰も気づいていなかった……

 

秘密を共有しているという特別感もあり、純に惹かれ始める三浦。純は自分の性的志向と彼女からの思いの中でせめぎ合う。

一風変わった青春?物語!!

 

感想

 

タイトルでちょっと買いにくいって感じてる人にも是非読んでほしい!

 

特に最近、ジェンダーについての議論が活発化しているのでこの機会に多くの人に触れてほしい作品だと感じました。

 

これは持論なんですけど、ただ事実とか研究結果を羅列してあるような本から情報や知識を取り入れるより、一本柱のある物語に乗せていろんな背景や情報を与えられたほうが読み手の心に残るんじゃないかなって感じています。

まあいつかの戦争で油まみれになった水鳥の映像を流すことによって国民の戦争意欲高めたみたいな話もあったじゃないですか。あれと同じで。

ストーリーがあったほうが共感できるって心理ですかね?

 

百聞は一見に如かずじゃないですけど多くの人の目に留まってほしい。

 

んで、内容に対する感想なんですが、本当に純くんとかが儚い

性的マイノリティ故の苦悩とか思いとか痛みとか全部抱え込んでい、その描写を僕たちは読まされるわけですよ。

 

言葉の一つ一つが痛いし涙腺にも来るに決まっているじゃないですか。

 

特に終盤入ったあたりの展開はキツかったですね……

 

んで、作内での純の心理描写が巧み過ぎてこの作者すげえってなって調べたら、作者の浅原ナオトさん自身もカミングアウトしてらしたようですね。

そりゃこんだけ揺れ動く純の心理描写が生々しさをはらみつつ描き切れる訳だわ。

ちょっと人とは性的趣向が違うだけでここまで日常生活での苦労があるのかって感じで脱帽です。月並みな感想ですがやっぱ難しい問題ですよね……

 

純くんは同じ性的マイノリティで、顔も知らない「ミスター・ファーレンハイト」という人物とよく会話しているんですが、この二人の関係の結末も儚い。

詳しくは書きませんが全幅の信頼を寄せられる友人っていいですよね。

 

作中でも語られていましたが、物理の問題などで端に小さく書かれている「摩擦や空気抵抗は加味しないものとする」という文言のように、「ないもの」として扱われているような性的マイノリティの方も声をあげられる世界になればよいですね。

 

ほんとにこんなデリケートな問題についてどう取り組み、どういった反応をすればいいか今の自分には正直分かりません。

 

でも、色々な本を読んで少しでも自分の認識を改めたり、世界を広げたりできたらいいなって思います。

 

この本は今私たちが直面している問題に対して一石を投じるような小説なので、

いろんな人に色々な感情を湧き起こしてもらいたいですね。

 

僕はこの本のラスト、めっちゃ好きです。

 

それでは。

 

実質半額で本が入手できるぶっ壊れキャンペーン、ニコニコカドカワ祭りについて

皆さん、本読んでますか?

 

今回は実質半額で本を購入できる、ニコニコカドカワ祭りについてです。

 

このキャンペーンほんとに頭おかしいと思います。

 

内容

ニコニコカドカワ祭りは、十月一日から開催されている狂ったキャンペーンです。

 

内容は電子書籍が安くなったり、対象の紙の本を買ったら同じ本の電子版が無料でもらえたり、豪華賞品が当たる懸賞があったりしますが、やはり目玉は最大50%還元ですね。対象商品が角川から出版されている本すべてというところもデカい!

 

具体的な方法は、

カドカワのアプリに登録する。

②購入した本のレシートを撮って送信する。

③半額分のポイントがたまる。

といった感じです。

 

ここで得たポイントをデジタル版の図書カードNEXTに変換できるので、実質半額キャッシュバックってことですね。

加えて、そこで得た図書カードNEXTは別にカドカワ以外の本に使ってもよいということなので、

カドカワの本を買って還元した図書カードで講談社の本を買う

って芸当もできるわけです。凄いですね。

 

ただ、還元には写真にとる領収書の存在がマストなので、オンラインショップなどでは還元されない場合があります。

せっかくだからこの機会に本屋に足を運びましょう!

 

やってみた

本当に半額バックされるんか?と気になったのでやってみることに。

 

今回購入したのは旅先とかでポスター見つけたりして気になってた「ざつ旅」。

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一巻からクソマイナー県の富山の宇奈月温泉選ぶのは攻めすぎでは?(地元民)

 

レシートをアプリに読み込ませ、そのまま放置。

 

一日後……

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本当に金帰ってきた。凄い。

 

こっからポイント利用して図書カードに変換できるシステムっぽいですね~!

 

(十月九日現在、レシートの読み込みに少し遅延が出ているようです……人気やな!)

 

まとめ

もうあまり日にちがありませんが、半額キャッシュバックは本が好きな皆さんにとってめちゃめちゃ嬉しいキャンペーンだと思います!

 

この機会を逃さずきっちりほしい本買っときましょう!

 

巷説百物語シリーズ収集すっか……

 

詳しいことが載ってる公式のリンクです↓

kadokawadwango.net

 

それでは。

 

青春18きっぷで山陽一人旅に出たって話。[二日目・倉敷→舞子公園]

倉敷

再びながながと電車に揺られ、福山から倉敷へ。

これでとうとう広島脱出です。また来ます!

 

とうとう到着した倉敷駅

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全然倉敷と関係ないんですけど、電車から降りて何も見ずに北口か南口かえいって選んで目的地と真逆の方向行ったりすることありませんか?

 

僕は勝手に駅口ガチャって名付けて適当な出口から出て方向あってたらラッキーっていつもやってます。広島と尾道では外れ引きました。

 

倉敷に来た目的はもちろん、美観地区

 

古い町並み大好きマンとして是非押さえておきたかった!

 

大通りを下っていけば美観地区に行けると駅の近くにあった観光マップに書いてあったので、大人しく大通りを歩くことに。

 

初めての街ってやっぱ新鮮だな~って歩いていると、変わった自販機を発見。

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どことなく麦茶っぽいオーラ出すのよくないと思う。

正直今回の旅で一番驚いたかもしれん。

 

丁度冷蔵庫のスガキヤの出汁つゆが切れてたので買ってもいいかな……とか考えていたら一本八百円

 

大学生の財布にはキツイのでパスさせて頂きました。

旅先で見た面白いものを躊躇なく買えるぐらいの生活をいつか送りたい!との希望を胸に通りを歩き、とうとう美観地区へ。

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おお……

僕の求めた全てがここにあるじゃないか!

 

雰囲気が良すぎる。タイムスリップ感が素晴らしい。

改めて見ても青空に家の外壁の白が映えて綺麗ですね。

 

特にこのエリア令和の近代的商店街からいきなりこの空気に変わるのがスゴイ!

 

正直ここだけで満足した。

 

他にもこういう漆喰の壁の隙間とか

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柳の緑と水路とか

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このレトロな本屋とか!

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この本屋さん、見た目から古めの本しか置いてないのかと思って入ったら最新の本までしっかり取り揃えてあって意外でした。店内の雰囲気も木を前面に出したデザインでいい。せっかくなんで巷説百物語を買って帰りました。

 

もうこのエリアは入るだけで僕の幸福度がMAXまで跳ね上がったので散策もそこそこにして切り上げました。また倉敷来るときの口実を作るために。ぜってえまた来るぞ。

本っっっ当にいい町並みと雰囲気でとっても癒されました~!

 

以下倉敷の写真!

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倉敷を脱出し、最後の目的地、舞子公園に向かいます!

 

舞子公園

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舞子駅です。

もうだいぶ日が傾いてきました。

鈍行あるあるで無計画な旅をしていると気が付けばこんなんなってますよね……

 

目と鼻の先の舞子公園へ。

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明石海峡大橋のおひざ元だけあって大迫力!

ちょっと天候が優れなくてもこんだけ存在感あるのってすごい。

ポケモンBWのスカイアローブリッジ感が半端ない。

 

せっかくなんでプロムナードなるところに行ってみよーと思って入館したのが5:23分。

閉館が六時で閉館三十分前が最終受付だから滑り込みで入れてラッキー!

 

受付を抜けると、すぐ前にあるエレベーターに乗ることに。

 

受付から直でエレベーター案内されたのハルカス以来だわ……

 

プロムナードっていうから海面にせり出した道でもどっかにあるんかと思っていたけどそうではないらしい。

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絶妙に高い場所に連れてこられました。

晴れていたらもっと遠くまで見渡せるのに……!

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と、展望台で悶々としていたら、海に向かって伸びている通路がありました。

 

プロムナードっぽいとこないなーって思ってたら橋の中にあるんかい!

 

そりゃ外からは気づかんわ。うん。

 

んでちょっと中に入ってみるとこの景色!

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この縦横無尽に広がるパノラマもいいんですけど橋の鉄骨のメカメカしさがいい味出してる!

上の部分通ってるトラックとかの音も聞こえてなかなかに迫力がある。

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高いところ特有のブレイブメンロードもあった。

下のガラスが皆に踏まれすぎて若干くすんでいたのが残念。

 

以下、プロムナードの先っぽらへんから撮った写真です。

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海と高層ビルのコントラストがきれいですね。兵庫。

 

プロムナードも閉館時間なので地上に戻り、海際で文字が見えなくなるまで「塗仏の宴」を読むことに。

海沿いで潮風に吹かれながらだらっと時間を過ごし、これで最後の非日常の時間を味わいました。

 

ガチで帰りたくねぇ。日常の檻に戻りたくねぇ。

 

もっと自由に旅ができる日常戻ってこんかな……

流石に暗くなってきたんで泣く泣く帰路につくことに。

これにて全旅程は終了です!

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旅を振り返って

今回兵庫より西の地区へ行くの初めてだったんですけど、とっても新鮮で楽しかったです!

ただ、厳島原爆資料館、倉敷など再度訪れる必要がある場所が多々あったので、また世の中が正常に戻ったらリベンジしたいです!

後、山陽と山陰のアクセス早急に改善しろ「」

 

青春18きっぷを買ったのが今回初めてだったんですが、値段の割に非常にお得な切符だと感じました!18キッパーって人種が多いのも納得!また発売される時期に旅にでたいなぁ……

結論として、

 

やっぱ日ごろの憂鬱や鬱憤をぶっ飛ばすには旅だわ!道中であった皆さんに感謝!

 

それでは。

「燃えよ剣」公開記念衣装展に行ってきました!

はじめに

言わずと知れた不朽の名作、「燃えよ剣」の映画が十月に公開されます。

 

原作の司馬遼太郎作、「燃えよ剣」は新選組の鬼の副長、土方歳三を主人公に据えたストーリーで、土方の一生と丁寧に描き切った作品です!

 

僕も昨年読んだのですが、非常に面白かった。司馬遼太郎先生は描写が巧みなので司馬史観って言葉が出るのも分かる気がします。アレはさすがに影響受ける。

 

映画が延期に延期を重ねているってことは知っていたので、いつか公開されればいいな~と思っていた矢先にこの特別展。

 

これは行くしかない。

 

ってことで八尾のショッピングセンター、アリオに突撃してきました!

 

衣装展にて

やっぱり岡田さんカッコいい!

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店内をぶらついていたらドカンと展示してました。

 

ホント岡田さんって何やらせても絵になるの素晴らしいと思う。

 

このパネルの横には衣装が。

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……まあ三着しかないけどええか。

よく考えるとなぜこの衣装展をこの八尾でやっているのかが分からない。

 

八尾でロケでもしたんかな?司馬先生の実家近いから?

 

個人的に衣装より気になったのがこのパネル群。

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遠目で読ませる気ないやろ!

って感じでぎっしり書かれた撮影のレポートパネル。

キャストの選出理由とかが結構詳しく書かれていて面白かったです。

 

んで二枚目は用語やキャストの写真、相関図が記されているパネル。

 

これ近藤勇芹沢鴨がはまり役過ぎませんか?

 

鈴木さんのガシッとした体形が自分の中の近藤さんのイメージぴったしです!

西郷どんの裏でこれ撮影してたってエピソードが面白すぎる。でも求心力のあるリーダー像として非常にマッチしていると感じました。

 

そして芹沢鴨を演じる伊藤さん。これは凄い。

芹沢自体がああいう人間だけに、渋いカッコよさとちょい悪感がある伊藤さんを引っ張ってきた監督は本当に有能。ヒール役としてこれ以上ない人選。

もう伊藤さんはカッコ良すぎてエロいの領域まで入ってる。これはよい。たまらぬ。

もう胸いっぱいだよ俺は……

 

終わりに

規模自体は小さめの展覧会でしたが、パネルの内容に凄い一人で満足できた催しでした。

実写版の「燃えよ剣」の期待値がガンガン上がっていきますね!あの物語を映画という限られた時間でどう表現するのかが楽しみです!

 

また原作読み返そうかな。

 

それでは。

 

人間の常識の範疇に囚われない、日常に潜む殺人鬼――貴志祐介「悪の教典」

今回紹介するのは、貴志祐介先生の悪の教典です。

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僕は昔から結構貴志先生の本が好きで、今まで読んできた中で一番好きな本は?と聞かれたときに先生の「新世界より」をあげるくらいにはファンです。

 

その「新世界より」をはじめとして、「クリムゾンの迷宮」、「天使の囀り」、「雀蜂」など先生の著作は読んできていますが、なんだかんだ読んでいなかった「悪の教典」でした。この作品が先生の著作の中でトップクラスに有名だと知りながら……

 

てなわけで読ませていただいたこの「悪の教典」、期待を裏切らない面白さでした!

 

あらすじ

高校で英語教師を務める蓮見聖一は、生徒から「ハスミン」と呼ばれているほど生徒からの信頼が厚く、親衛隊ができるほどの人気教師だ。蓮見はその性格と人あたりから、教師陣からも一目置かれる存在であり、学校の幅広い層から支持を獲得していた。

しかし、その正体は今までに人知れず人を殺し続けてきた殺人鬼だった―

蓮見と三年四組の生徒が行きつく先とは?

 

って感じです。

 

見どころ

 

この小説は蓮見が学校内外で気に入らなくなった人間を排除するという大筋の元進んでいくのですが、その排除方法が非常に狡猾。

それはもうあの手この手で排除していくわけです。

 

でも、その練りに練られた排除方法に少し読者としては快感を覚えてしまうんですね。

本当は恐れるべきところなんでしょうけども。

 

蓮見が本性を出して人を排除しようとするところの筆致が素晴らしい。

本当に貴志先生は読ませる文章を書かれるなぁと勝手に感動させていただきました。

 

そして、特筆すべきが蓮見が英語教師であることを活かした会話表現だと思います。

蓮見は会話に英語表現をよく織り交ぜてしゃべるのですが、それがまた作品のよいエッセンスになっていると感じます。

 

急に英語を話すことで蓮見の普通の人間ではない異物感が際立つというか、恐怖を感じるんですよね。緊迫した場面でこいつは何を言っているんだっていう。

 

その異物感を作品に練りこむことで、この作品特有の恐怖や無辜の人間の日常が一瞬で消え去る非日常感、緊迫感が伝わっているような気がしました。

 

まとめ

この作品をネタバレなしでどこまで語れるかって、この文を書いていて考えていました。でも正直、緻密な心理描写や戦闘シーンの迫力、一気呵成に畳みかけるような展開でまあまあネタバレ食らっても楽しく読めるタイプの本だと思います。

楽しいとは真逆のような激重ストーリーですが。

 

読後は放心状態になるぐらいの余韻がある一冊です。カバーが新しくなって結構店頭で見かける今、是非時間があるときにでも読んでいただきたく感じました!下巻は圧巻の展開で時間が消し飛ぶ感覚が味わえると思います!

 

それでは。

 

あの最近新しくなったカバー、めちゃめちゃよくないですか?

最近の字で人を釣るカバーは苦手なんですけど、アレはデザイン性が高くて凄い。

Angel Bearts!感が非常に刺さりました。あのカバーだけでも欲しい。

 

榎木津が全てを粉々に粉砕するスピンオフ。――「百鬼徒然袋 雨」

本編の陰鬱とした雰囲気はどこ行ったんだよ!

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今回紹介するのは百鬼夜行シリーズの榎木津礼二郎を主人公にしたスピンオフ、

「百鬼徒然袋 雨」です。

 

もう詳細については後で語りますが、爽快ではっちゃけていて、シリーズ本編を読んだ人に向けたデザート的な楽しい小説です!

 

内容

「僕」は姪の早苗が事件に巻き込まれたことを知り、知人の勧めによって薔薇十字探偵社に向かった。探偵社の益田より、探偵の榎木津は、「説明できない人間」だと説明される―

次々に持ち込まれる事件に対し、榎木津は場を荒らし、粉砕する。

中禅寺、木場といったいつものメンツを巻き込んで展開される痛快短編!

 

って感じです。

 

見どころ

番外編の癖に本編の主要キャラが本編より生き生きしてます。

 

この作品、京極堂が大笑いする描写があるんですよ?

 

東京が全滅したような仏頂面とか形容されていた彼がですよ?

 

こんなことあっていいんか?

 

あと中禅寺、割と楽しんで榎木津の計画に乗っかってんだろ。

割とあんた楽しそうな描写多かったよ。男同士の友情とか一緒にバカやるの楽しいよね。分かる。

 

そんで木場さんは二本目の短編、瓶長にしか登場しませんが役どころが面白すぎる。

あの役割は木場さんにしかできないけどさすがに笑う。

 

ここまでほかのレギュラーメンバーについて語ってきたけどやっぱり榎木津が一番いい味出してる。

 

下僕に対する暴言のレパートリーがありすぎる。

 

馬鹿とか言われている割に、やっぱ帝大出てるから言葉の節々から頭の良さの片鱗を感じるよ僕は。

 

特に瓶長の話では、言葉遊びに近いようなセリフが多々出てきます。

 

こんな言葉を当意即妙に放てる人と友達になったら楽しいだろうなと思う反面、榎木津は友達にしたくないと思う自分がいます……

 

まとめ

とりあえず暗い気分をぶっ飛ばしてくれるような、百鬼夜行シリーズとは思えないハチャメチャな展開が楽しめる小説です。榎木津スキーの方々には絶対に刺さると思うので是非読んでいただきたいです!

 

男同士がわちゃわちゃしてるのって見てて楽しいよね。

 

それでは。