人間の常識の範疇に囚われない、日常に潜む殺人鬼――貴志祐介「悪の教典」
僕は昔から結構貴志先生の本が好きで、今まで読んできた中で一番好きな本は?と聞かれたときに先生の「新世界より」をあげるくらいにはファンです。
その「新世界より」をはじめとして、「クリムゾンの迷宮」、「天使の囀り」、「雀蜂」など先生の著作は読んできていますが、なんだかんだ読んでいなかった「悪の教典」でした。この作品が先生の著作の中でトップクラスに有名だと知りながら……
てなわけで読ませていただいたこの「悪の教典」、期待を裏切らない面白さでした!
あらすじ
高校で英語教師を務める蓮見聖一は、生徒から「ハスミン」と呼ばれているほど生徒からの信頼が厚く、親衛隊ができるほどの人気教師だ。蓮見はその性格と人あたりから、教師陣からも一目置かれる存在であり、学校の幅広い層から支持を獲得していた。
しかし、その正体は今までに人知れず人を殺し続けてきた殺人鬼だった―
蓮見と三年四組の生徒が行きつく先とは?
って感じです。
見どころ
この小説は蓮見が学校内外で気に入らなくなった人間を排除するという大筋の元進んでいくのですが、その排除方法が非常に狡猾。
それはもうあの手この手で排除していくわけです。
でも、その練りに練られた排除方法に少し読者としては快感を覚えてしまうんですね。
本当は恐れるべきところなんでしょうけども。
蓮見が本性を出して人を排除しようとするところの筆致が素晴らしい。
本当に貴志先生は読ませる文章を書かれるなぁと勝手に感動させていただきました。
そして、特筆すべきが蓮見が英語教師であることを活かした会話表現だと思います。
蓮見は会話に英語表現をよく織り交ぜてしゃべるのですが、それがまた作品のよいエッセンスになっていると感じます。
急に英語を話すことで蓮見の普通の人間ではない異物感が際立つというか、恐怖を感じるんですよね。緊迫した場面でこいつは何を言っているんだっていう。
その異物感を作品に練りこむことで、この作品特有の恐怖や無辜の人間の日常が一瞬で消え去る非日常感、緊迫感が伝わっているような気がしました。
まとめ
この作品をネタバレなしでどこまで語れるかって、この文を書いていて考えていました。でも正直、緻密な心理描写や戦闘シーンの迫力、一気呵成に畳みかけるような展開でまあまあネタバレ食らっても楽しく読めるタイプの本だと思います。
楽しいとは真逆のような激重ストーリーですが。
読後は放心状態になるぐらいの余韻がある一冊です。カバーが新しくなって結構店頭で見かける今、是非時間があるときにでも読んでいただきたく感じました!下巻は圧巻の展開で時間が消し飛ぶ感覚が味わえると思います!
それでは。
あの最近新しくなったカバー、めちゃめちゃよくないですか?
最近の字で人を釣るカバーは苦手なんですけど、アレはデザイン性が高くて凄い。
Angel Bearts!感が非常に刺さりました。あのカバーだけでも欲しい。