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登場人物全員が駒、中央で糸を引く絡新婦とは誰なのか――京極夏彦「絡新婦の理」について ※ネタバレなし

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絡新婦の理について


この本、滅茶苦茶、面白い。

「絡新婦の理」は京極夏彦先生の「百鬼夜行シリーズ」の第五作目で、

シリーズ最高の分厚さを誇っています。解説含め1389ページ。頭おかしい。

背表紙で自立すると言ったらこの本の鈍器具合がわかるでしょうか?

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百鬼夜行初見の友達に見せたら「六法?」と返ってきました。僕もそう思います。

 

この分厚さで敬遠されがちな百鬼夜行シリーズですが、中身は本当、抜群に面白い。

読んだことがない方は比較的薄い?姑獲鳥の夏から読むことをお勧めします。

このシリーズの沼は本当に深いです。早くこっちにきて沼に浸かろう!

 

さて、肝心のあらすじです。

あらすじ

女の死体が宿で発見された。両目を潰された姿で。

木場は手口の共通点から、連続殺人犯、平野祐吉の仕業であると考えた。

しかし、現場では木場の旧友、川島新造らしき目撃証言や遺留品が残っており―

 

聖ベルナール学園に通う呉美由紀は、学校にある謎の像「黒い聖母」に向かって儀式を行うと、人を呪い殺すことができるという噂を聞く。友達の小夜子にはどうしても呪いたい相手がおり、二人はこの噂について調べることになるが―

 

連続殺人事件と学園での「黒い聖母」の噂。

一見関係のないと思われた事態は網のように収束し、京極堂をも飲み込んでいく―

どこからどこまでが罠なのか。その惨劇は防ぐことができるのか。

――そして、中心に陣取る「蜘蛛」とは誰なのか

シリーズ最大規模の事件、京極堂シリーズ第五弾!

 

といった感じです。なんかの宣伝のようになってしまいました。

 

みどころ

あらすじが拙いですが内容は抜群に面白いんですよ(n度目)

登場人物は京極堂をはじめとして木場、榎木津、敦子などのレギュラーに加え、

いさま屋や益田など、準レギュラーも数多く出演しています。

特に益田さんは大きな変化があるのが見どころですね。

関口君は……うん。

 

京極堂のいつもの蘊蓄も冴えわたり、日本の男女観やある宗教、フェミニズムについて深く深く語られていました。

特にフェミニズムについての講釈は必見です。

ネットで叩かれているようなそれとは違って、かなり納得できる内容でした。

総評

相も変わらず分厚いこのシリーズですが、後半400ページの読ませ方はヤバいです。

驚異的な伏線回収と息をもつかせぬ展開でガンガン読ませに来ます。

これだけ長いクライマックスもないのではないのでしょうか?

この部分を読んでいるときの時間の消し飛ぶ感覚を未読の方に是非味わって頂きたいですね。

今回は女性キャラが多く、華やかなのもgood。

 

そして、特徴的だと感じたのは今回は今までの作品と異なり、冒頭に物語の結末となる描写が書かれています。読み始めていきなり「おっ」となるわけですね。

しかし、というか案の定、その部分だけでは何を言っているのかわからない描写です。だから初手で犯人や事件の全貌が分かるということはありません。

で、最後まで読み切って最初に帰ってくると、「あぁ……」となります。

最後まで読み切ってからこの冒頭を読むと――物語の終わりを感じる上に凄い寂寥感というかやるせなさとかが襲ってくる訳です。読み終わった後の余韻が半端ないです。

 

そしてこの冒頭の描写で特筆するべきはその美しさでしょう。

なんかもう凄いんですよ!桜吹雪の舞う情景がありありと浮かんで物語を通しての儚さとか全部が集約されている感じです。僕如きの貧弱な語彙力では表しきれないほどの美しさです。使う人によってこんな普段使いしている言語が美しく化けるのかと。

日本語の美しさを再認識するいい機会になりました。

まあ、英語の勉強から逃げる理由にはならないんですけどね……

 

間違いなく面白いうえ、勉強にもなる本なので興味を持った方はぜひ読んでみてほしいです!

――それまでに鉄鼠までの四巻も読もうね!

下に百鬼夜行のリンク貼っときます。

それでは。

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